Entries

消費者の自信が示すもの

昨年の今頃、2月末からの世界同時株安で、サブプライムモーゲージの名称が一般に広まった頃、これは大きなリセッションの発端なのだという人もいれば、サブプライムはハウジングセクターというアメリカの不動産ビジネスの一部、大きな経済の中のほんの小さな部分のことであり大きな影響はないのだ、という人もいた。

確かにサブプライム、ハウジングセクターは一部でしかないかもしれないが、お金は天下の回りもの、という当たり前の感覚が欠如した分析には驚く。が、住宅市場はバブルではない、永遠に上がり続けるのだというアメリカ人全員の信仰のようなものによっていたのだろう。アメリカの消費者は、家を担保にお金を借りて消費を続けていたのだから、その元手が下がれば、心もとなくなるだけでなく実際に打ち出の小槌が効かなくなり、消費者信頼感指数が下がるのは当然である(現在、不動産価格と同様、順調に下落している)。

すると小売セクターは当然のことながら打撃を受けるが、もうアメリカの消費者を相手にしていない多国籍企業も多い。彼らの業績は好調だったりする。しかし、世界の需要の牽引車がアメリカの消費者だとすると、結局彼らのところにも、世界景気減速として跳ね返ってくることになる。せっかく難を逃れたと思ったのに不幸なことだが、これも宇宙船地球号の効果だろうか。今は、アメリカの消費者に頼らない世界経済のバランスを構築する過渡期にあると言えるだろう。

ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)が持つ新聞

昨日はマードックの傘下に入ったWSJについてだったが、オーナーはメディアにどのような影響を与えるものだろうか。オーナーは何がしかの影響を与えるか、利益を期待して、いずれにしても、何らかの自己の利益を期待して投資しているのだから、我々がメディアを見るときに、その持ち主を確認するのも自然なことだ。

では、SWFがオーナーだったらどうだろう。UAEの7つの首長国の一つ、アブダビのSWF、ムバダラ開発がオーナーの英字新聞、アブダビに本拠を置くThe National (http://www.thenational.ae/apps/pbcs.dll/frontpage) はローンチしたばかりだ。発展目覚しいUAE(特にアブダビ、ドバイ)を中心に、外国人が多数流入し、英字新聞の需要も高まっている。新たな巨大な商圏が出来上がりつつあるのだ。メジャーな既存の新聞も無視できない金融センター、つまり新聞を売れる市場となりつつある。しかし、そこは絶対君主制であり、政府に対する批判は難しいところでもある。

仮に言論の自由がなくとも、人民は真実を察知するものだろうが、その報道はどんなものになるのだろうか。湾岸諸国の世界でのウェイトがさらにあがると、マードックはまたその地の新聞を買いに行くのだろうか。

変わりゆくウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)

昨年、マードックのニューズ・コーポレーションが、WSJのダウジョーンズ社を買いそうだ、という話になってから、WSJがどんなふうに変わってしまうのだろうか、というのは、皆(特に読者)の懸念含みの大きな関心事だった。WSJのジャーナリストにとっては、切実な、できれば避けたい事態だったに違いない。

マードックが買うからには、変わるに違いない、というのがもっぱらの予測だった。テロに倒れたWSJの記者、ダニエル・パールの事件を追ったドキュメンタリーでは、元ジャーナルの記者は、「WSJの記者はお金を追うように教育されている」と語っていた。どんなことをするにもお金がかかる。テロもしかり。そのお金の出所を追って事象、事件をフォローするようにしつけられているというのだ。WSJ独特の見方、そのニュースの権威の一因を垣間見たような気がした。そのような独自のカルチャーが記者の骨身に染みわたっているのは、大きな財産であり、ちょっとやそっとで築けるものではない。

それが、トップダウンの力で否応なく変容されようとしている。政治記事が多くなり、記事は短くなり、NYタイムズに対抗できる普通の新聞になろうとしているようだ。編集長も降りることになった。WSJ内部の記事、それもマードックに批判的なものがそう長々とWSJに掲載されるわけもなく、我々は外部の新聞で事情を読むことになる。マードックとWSJの話だから、十分、ビジネスセクションに載っておかしくない記事だが、そういった記事には、WSJへの敬意とマードックへの批判とWSJ記者へのシンパシーが感じられる。それでもお金の出所がマードックであれば、どうしようもないということなのか。

息を吹き返したヒラリー

ペンシルバニアのプライマリーでオバマに10ポイントの差をつけ、資金切れ、いつ撤退するのか、NY知事選に転身の道を用意してあげれば撤退できるのでは、など、の憶測があった、ヒラリーは次回、5月のインディアナの予備選に首がつながった。

私は長らく、アメリカ人の許容度から考えて、マイノリティー大統領が女性大統領よりも、先に来ると思っていた。アメリカというと、都市に住むリベラルなアメリカ人を思い浮かべる人が多いだろうが、全体でいえば保守的で信心深い人のほうが多いのだ。無神論者では絶対に大統領にはなれないだろう(何十年後かには世界は変わっているだろうが)。ドイツの首相が女性になるように簡単には、アメリカ人はヒラリーを選べないだろうと思っていた。また、アンチヒラリー層というものが存在し、ヒラリーが何をしても何を言っても、嫌いというこれまた根強い層が存在する。アンチ・ヤンキース、アンチ巨人のようなものだ。

しかし、ヒラリーは、元ファースト・レディーであり、『クリントン』の知名度は絶大なものがある。持論にもかかわらず、中盤までの圧倒的なヒラリーの強さに、これは『クリントン』にはかなわないということか、と予想を変更しかけていた。が、オバマは勢いに乗ってしまった。公開で大統領選挙を行なっているのだからnepotism(縁故主義)ではないが、クリントンやブッシュの名前と顔で登場するだけで、政治資金投入度合いにしてはかりしれない下駄を最初の段階から履いているようなものだ。そもそも規制しようがないが、フェアじゃない感覚をぬぐうことができない。といっても、今回はどうしようもないけれど。

毎回、大統領選は盛り上がるが、今回は役者がそろい、特にである。4年前も、都市部ではブッシュを倒すために盛り上がり、ジョージ・ソロスはそのために200ミリオンドルを投入したが、皆、候補者については、あまり興奮しなかった、と言う。今回はアメリカの人材の豊富さを垣間見る思いだ。しかし、ヒラリーvs.オバマに気を取られていると、まったく違う結果になりかねない。なんといっても戦績でいっても、この国では共和党のほうが強いのだから。マネーとパワーを握っているのも、こちらだろう。

クレジット・デフォルト・スワップと決済機関

デリバティブは人々のニーズに応えて、様々な商品となってこの世にでてきたが、その一つがクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)である。日産の経営危機が囁かれていた頃には、日産のCDSが現実味をおびて取引されていたぐらいだから、特別新しいものではない。

新しい状況は、信用不安にかられ、CDSが積みあがり、すべての取引を全部相対でヘッジしてCDSをかけるのは、大変過ぎる、何かあったときに実際どうなるのか、ということに皆が同意したことだ。ベアー・スターンズが破綻しかけたことで、その場合にどんなことが起こるかが見えてしまった。大混乱を回避するために、ボンドなどと同様、CDSにも決済機関を設ける計画が進行している。計画では、有力金融機関各行がバックについた、シカゴの先物決済会社、クリアリング・コープが決済機関となる予定で、2008年の第二四半期に稼動する予定だ。

また規制当局は、まったくの相対でカウンターパーティリスクをヘッジするべくCDSを掛け合うのではなく、『central counterparty/中央カウンターパーティ』なる、仲介者を置いて、みんなでリスクを少しずつ分担する方法を考えているらしい。これなら、CDSが積み上がり、当局の担当者が夜も眠れない、ということはなくなる。しかし、そこに行くまでには情報の共有、CDSの標準化が必要となる。デリバティブの一種のCDSはOTC物であり、値段の評価の仕方も相対で様々であり、相対でしかその情報は共有されない。それでも、参加者が多ければ、あまりずれた値段を提示する業者は取引できなくなるだけであり、これまでワークしてきた。またトレジャリーであれば、世の中の流通量は分かっているが、CDSはそのような契約を締結することにより、いくらでもオフバランスの契約を書くことができた。が、市場が大きくなりすぎて、標準化への圧力がかかっているようだ。一年後にはこのトレンドはどちらの方向に向かっているだろうか。

大統領選挙とヘッジファンド

ヘッジファンド産業が拡大するにつれ、ヘッジファンド・マネージャーは使い切れないお金の有効な使い道を考える必要がでてきた。その答えは、1.フィランソロピー、2.アート、3.政治である。フィランソロピーでは、彼らの名前を冠したものがたくさんでてきている。また、お陰でアート市場にもお金が流入し、学生の作品にも高値がついてしまい、バブルかとも言われている。このトレンドがずっと続くならバブルではないが。作品自体は通常業績拡大したり、配当を出したりしないので、そもそもの評価は相対的、主観的なものだ。

そして政治である。フィランソロピーで社会に還元、アートを愛でる、アーティストを育てる、よりも、自分の利益を追求できる政策を実現してくれる人をホワイトハウスに送り込むほうが、投資へのリターンは高いだろう。コネチカットに在住する彼らのお陰で、大統領選挙の政治献金パーティーは今までになく、コネチカットで多数開催されることとなった。

自分の利益を実現してくれる、という意味では、マッケイン、クリントンのほうが有力そうだが、NYタイムズの記事によれば、オフショアファンドへの規制を提案しているオバマも有力ヘッジファンド・マネージャーから献金を集めているという。そのココロは、マッケインやヒラリーでは、パーティーに呼ばれるためには(候補者と一緒に写真を撮ったり、有力者の仲間入りをするには重要ですね)、10年前から献金している必要があるのだそうだ。ニューフェースのオバマではそんなことはない。また、自らをアウトサイダーと見るヘッジファンド・マネージャーはオバマに自己を投影するのだとか。新卒者の人気就職先になりつつあるし、そろそろアウトサイダーではなくなりつつあると思うのだが。

ヒラリーはそろそろお金の面で厳しそうだ。権力を追求するにもお金がかかるのだ。

帰ってきた不良債権(non performing loan)

以前、決算が出るたびに、邦銀21行(長信銀三行+都銀)の不良債権(破綻先債権、延滞債権、金利減免)総額のリストを作り、BIS基準を満たすために彼らがどれだけ自己資本を調達する必要があるか確認していた時期があったが(もちろん仕事です)、その21行はいまや影も形もなくなってしまった。

それ以降、不良債権は非常に馴染みのある言葉となったが、アメリカでは着実に不良債権が増えている。目立つ大手行に目が行きがちだが、彼らだけでなく、銀行業界、全体が業務拡張し、ローンの規模を拡大していたのが、環境は変化し、車のローンの返済も滞りがちになり、現在の不良債権の割合は、80年代、90年代のS&L危機以降、最高となっている。

これから、何をするか?返ってくるあてのない不良債権は、いつまでもBSに載せておくわけにはいかないので、償却する必要がある。すると自己資本不足に陥る。自己資本増強が必要だが、この時期誰が銀行株を買いたいだろうか。なかなかお金が集まらないとなると、今度はアセットを削るしかない。お金をなかなか借りられない世の中になる。経済が縮小する逆スパイラルだ。これを避けたいなら、当局主導で手を打つしかない。

グーグルと高級紙

アメリカでは前四半期の決算が続々と発表されているが、グーグルは経済の減速にもかかわらず30%の増益で、株式は一日で100ドル近くの急騰となる一方、NYタイムズは損失を発表し、対照的な結果となっている。

フランスでは、フランスエリートのoracle(ご神託)ともいわれる、ルモンドも業績難から雇用削減を計画しており、反対するルモンドのジャーナリストは今週二度目のストライキだ。いくらストライキをしても、お金がついてこないことには時間の問題だろう。ルモンドもニューヨークタイムズも権威ある高級紙であり、読者にとっても、恐らく社会にとってもご意見番、あるいは近代史の記録係として、なくてはならない存在であるが、企業を支えているのはそういった読者ではなく、広告なのが難しいところだ。

フランスでも軒並み、紙メディアは業績が悪化しているものの、唯一、週刊誌は昨年は伸びたようだが、その理由が、選挙があったから盛り上がったから?、というのと、究極の時短により余暇を過ごす時間が増えたからではないか、というのがふるっている。日本の新聞よりもはるかに早く、マルチメディア戦略を打ち出してはいるが、現在のビジネス・モデルかマーケットの論理が変わらない限り、ジリ貧なのだろうか。薄くなったり、簡単になったNYタイムズは見たくないものだ。

Uncertainty

クレジット・クランチは一服したものの、個人の生活、雇用、経済全体への影響が現われるのはこれからである。すでに雰囲気は景気後退している、だが、その感覚の個人の消費行動がこれからどこまで、どれだけ続くのかは分からない、Uncertainty満載である。

Fedの行動規範と同様、株式市場においても、企業の突然の業績下方修正、上方修正など、いずれにせよ『サプライズ』は嫌われる。業績予想通りの結果を出し、途中、その予想がぶれるようであれば、業績予想を修正する必要がある。業績発表が年に一回では、その途中、投資家は暗闇に置かれるため、いまや四半期決算が導入され、小売業は月次売上げまで発表している。

だが、この不確かな時代、月次売上げや業績予想の発表を止めると小売業者が言い出した。メイシーズJCペニースターバックスCVSなど、まさに大手小売がそんなことを言い出すとは、彼らが肌で感じる市場はよほど読めないものになっているに違いない。消費者マインドがどちらに転ぶかでも一年の結果は大きく変わってくるだろう。また月次売上げを上げるために、月末に汲々とするようでは、長期的な展望に基いた経営はできなくなる。短期株主ではなく、長期的な株主に報いるためには、四半期決算もどこまで役に立っているのか怪しい。そもそも、バックミンスター・フラー先生の説を借りれば、農業は一年で決算するものだが、企業のサイクルはそれに合っているのかどうかも怪しい。小売は一年でいいとは思いますが。

ポスト民主主義

世界中で食糧難から暴動が起こり、ようやくバイオ燃料も本格的に論争の種となってきた。下院がバイオ燃料を支持したのは間違いだったと発言する議員もでてきた。

もちろんコーンベースのエタノールが食糧価格高騰の唯一の原因ではない。原油価格が高騰すれば、ほかのものはすべて上がるようになるほど、物資は世界中を動き回っている。しかし、間違いなくエタノールは穀物価格上昇の一因であり、投機的な動きを呼び込む要因でもあった。

暴動が起こる前から、コーンベースのエタノールに多額の補助金をつぎ込む政策は間違いだと分かっていたし、ブッシュが一般教書演説で大々的にこの政策を取り上げたときは、恥ずかしげもなくよく特定の人(票田)にメリットがある政策(補助金)を全国民に向かって発表できるものだと、逆に感心したが、どうしてこう、全体として間違えてしまうのだろうか。今から方向転換しても、一部の人はロビー活動の成果で、巨額の益を得ているが、それを取り返すすべはない。(おまけに高額所得者への減税もあった。)民主主義で、市民が故意に知らない状態に留め置かれているために、間違えてしまうのであれば、よく分かっている人に任せてしまったほうがよさそうだが、その人を選ぶのも難しい。そうなると誤りに気付くまでにタイムラグがあっても、民主主義のほうがましということになるのだろうか。ここまでお金が物をいい、資本主義も疲弊が見えてくると、資本主義の次と同様、民主主義にも次の形が必要かもしれない。well informed citizenの責任感を煽るしかないのか。

車が食べるトウモロコシ

過剰流動性が収縮し、潮が引いていく過程では、体力のない金融機関から干上がっていくが、コモディティ価格、つまり食糧価格が高騰していく過程では貧しい国から問題が発生する。エンゲル係数が100に近い家計では、バッファーは何もない。しかし、この近代においては、モラル的にも正義においても、経済上の理由からも、同じ地球上の国の窮乏を黙ってみているわけにはいかない。ハイチでは食糧難で暴動が起こり、首相は退陣させられた(日本から見ると中米のニュースはかなり遠いのだろうか)。ハイチに限らず、途上国では暴動が多発している。ハイチには世銀、ベネズエラから救援が届くはずだが、前々から予想されてきたことが、現実となってきた。昨年のコーンは豊作だったものの、穀物貯蔵量は歴史的な低レベルにあり、かつて途上国と呼ばれていた国の生活水準の向上、人口増、そしてバイオエタノール促進などにより、ジム・ロジャースは早くから、コモディティ価格の上昇を予見していた。

食糧危機に陥っている国がでてきても、補助金を出してまで、コーンを車を走らせるためにエタノールにするのか、という問いは目の前にある現実となってきた。農業大国アメリカにとって、コーン価格の上昇は戦略的である。ロビー活動は必ずしも、全体の益になるわけではなく、特定の集団にメリットがあるからこそエネルギーとお金をつぎ込むロビー活動が成り立つのだ。高く買ってくれるところに売る農家を責めることはできない。人の善意に期待するシステムは脆弱だ。

恐らく事情を理解すれば、食糧危機に陥っている国があるのに、補助金を出してまで、コーンを車を走らせるためにエタノールにするのか、という問いにはアメリカ人はノーというだろう。ただやっかいなところは、アメリカの外のことを語るような事情通な声には、スノッブ、リベラルというレッテルが貼られ、即シャットダウンしてしまうような保守的な、物を知らないことをよしとする人達が全体としてはかなり存在することだ。進化論ではない種の起源を信じる人がいる国なのだ。そして彼らは意図的にその状態に留め置かれているのかもしれない。

What if?

ベアー・スターンズ救済にFedを追い込むような、ヒステリカルなクレジット・クランチは一旦は沈静化したように見えるが、痛んだ金融機関を待ち構えているのは、レバレッジ解消モードである。レバレッジを解消するには、アセットを売るか、資本増強しかない。すでに売れるものは売ってしまったから、皆が困っているのであり、アセットを売るのも、さらなる市場の値崩れを招くが、このご時世、誰が資本増強に応じてくれるのか、というと、SWFsに頼りっきりでは本丸を乗っ取られかねない。つまり、どちらもそう簡単ではない。政府に頼るとなると、もう当局の抱えるリスクが大きくなりすぎて恐ろしいものがある。ドルごと沈没しかねない。かといって、縮小モードを選択すると、新しいローンは出てこなくなり、経済全体が緊縮モードに入り、間違いなく景気はさらに冷え込む。まずはもともと政府系のFannie MaeFreddie Macにお金を入れて、既存ツールをフル活用をしてもらうしかないだろう。それも迅速に。

Fedがインベストメントバンク救済に手を出した、というのは、今後(すでにだが)、その是非を問われることになるだろう。昔であればありえなかったことだろうが、インベストメントバンクのプレゼンスがここまで上がってしまった今となっては、Fedが商業銀行だけを面倒みていればいいという時期は終わっていたのだろう。が、ボルカーは納得していないようだ。

そもそもインフレ・ファイターのボルカーが議長であれば、サブプライムモーゲージ証券にあれだけのお金が流れ込むような、金余り現象は生じることはなかっただろうし、ウォール・ストリートのプレゼンスがここまで上げることもなかっただろうし、インベストメント・バンクの存在がここまでになることもなかっただろう。そして、Fed議長の名前(ie.グリーンスパン)がhousehold name(一般家庭まで浸透しているおなじみの名前)になることもなかっただろう。お金の存在がここまで浮上し、人々の意識に上ってくること自体が不健全だったに違いない。もう逆戻りはできないが。

日銀総裁の出身母体

昔、カリブ海の国のセントラルバンカーのクラスメイトが日本の金融システムについて、レポートを書くということで、護送船団方式から天下りにいたるまで、頼まれて、当時の『金融システム』について説明してあげると、それはひどい、失われた10年になるのも無理はない、と超納得した様子だった。自分で説明していても、大蔵事務次官が銀行の頭取になって、その後、日銀総裁では無理があるよなあ、と改めて思った。もう金融システム丸抱え状態である。

日銀職員はコクイチを通っていないのに経済官僚から見ればみなし公務員、準待遇でずるいという声があるやに聞いたが、自分のところのヘッド、日銀総裁は二回に一回しか自前では輩出できないのであれば、まさに準待遇で相応な待遇なのではないかと思っていた。

それが今回は空席期間を設けてまで、日銀総裁の経歴にこだわったという。もともと日銀に独立性はあるのだろうか?もちろん簡単に政治家の選挙対策の要請に折れてもらっては困るが。現Fed議長のバーナンキは学者出身、グリーンスパンは経済コンサルタント、その前のボルカーは生粋のセントラルバンカーだ(財務省にいた時期もありましたが)。でもセントラルバンカーのボルカーもそのポストに残るためには、政府の意向にかなっている必要があり、最後までは残れなかった。ボブ・ウッドワードの”Maestro”にはちょっとショックだった。ボルカーでさえ、政府の駒の一つなのだ。グリーンスパンは絶妙な綱渡りで、人気を博し、結局、大統領も彼を変えられなくなり、大統領以上とも言われる力を手にした。そう考えると、日銀総裁として活躍してもらうにはコネ、ネットワークも含め力量が問題なのであって、どこの出身かは大した問題ではないような気がする。瑣末なことにこだわって、この重要なときに、日銀総裁がいない、いなくてもいいと思っているということのほうが、全体像が見えていないようで問題ではないか。

Don’t blame me/議長の憂鬱

月曜日のフィナンシャル・タイムズの一面には、物言いたげなグリーンスパンの顔と、”Don’t blame me.(私を責めないで)”というキャプションがあった。最近はもっぱら自己防衛するしかないグリーンスパンの記事だろうと、指示通り13ページ目を開いてみると、それは、Fedは無実だというグリーンスパン本人の寄稿だった。

銀行のローン担当者は、彼の経験によれば、規制当局よりも、はるかによくカウンターパテーィのリスクを知っているという(だからFedが口出しするレベルではなく、Fedが今回の事態を防ぐことはそもそも不能であり、それを期待すること自体が間違っている)。資材のレベルから数字を積み上げて、経済活動をモニターし、予測することでずっと生計を立ててきたグリーンスパン氏が誰よりも(文字通り誰よりも)詳しいというのは、皆の知るところだ。NBCのアンドレア・ミッチェル記者(現在のグリーンスパン夫人)も、デヴィッド・ガーガンが、経済のことならワシントンではグリーンスパンが誰よりも詳しいとアドバイスしたからこそ、彼に電話してきたのでは?

でも、グリーンスパンのディフェンスは、単にDon’t blame me.だけではなく、彼の信条の根幹にかかわるものだ。アイン・ランド(Ayn Rand)を信奉する生粋のLibertarianの彼にとって、自分の議長時代への非難とあいまって、市場の自由度が規制されるようになるのを晩年になって見るのは、何よりも辛いことに違いない。

二週間、スリープ状態でしたが、これからは平常どおりとなる予定です。