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ニューヨークにおけるラーメンに対する効用曲線

ニューヨークには鰻屋はないけれど、蕎麦屋もあればラーメン屋もある。特にラーメンは映画『タンポポ』の影響とは思わないけれど、近年知名度が上昇し、日本のラーメン・チェーン店が上陸するたびに、ローカルの日本人が行列を作り、さらに注目を集めている。最近は一風堂がオープンし、一時間、二時間待ちは普通といわれていた。

そういう話を聞くと、ラーメンが食べたくなるが、さすがに長時間待つ余裕がないときに、ほかのラーメン屋でラーメンを食べつつ、一風堂の話をすると、友人は「そのお店は予約できないのか」と聞く。日本人ならラーメン屋で予約するという発想は絶対にない、と驚いた。超ラーメン食べたいモードだったのに、残念ながら、そのお店のラーメンはいまいちで、これは日本なら商売は続けられないのではないか、と思うほどだったが、お店を出るころには行列(日本人以外)ができており、アメリカ人のスタンダードは日本人よりも相当甘いに違いない。

今週は念願の一風堂に行ってみた。ランチということで待つこともなく入れたが、ラーメン屋とは思えない、アップスケールなお店に驚く。中に普通のラーメン屋が十個以上入りそうな広々とした造りで、椅子もテーブルもお洒落なレストランのようで、メニューもお客さんが長居するようにできている。ラーメンはアメリカで初めて食べる日本の味と同じラーメンだった。豚骨スープに細麺が美味しい。でも13ドルである。それも、ちょっとお腹がすいているときにはいいが、これでは物足りないときもあるだろうという量である。ラーメンが1000円以上すること自体、えっと思うが、更にタックス、チップで16ドルになる。日本で1600円のラーメンを普通に食べるだろうか?場所が変わると、希少価値、比較対象も変わる。日本に帰らないと食べることのできないラーメンと思えば、効用曲線もシフトし、少々な割高は許容することになるだろう。ニューヨークの紀伊国屋書店で日本語の本を買うのと同じだ。でも、16ドル?(日本では650円)と思うのは私だけではないようで、アメリカ人の間でもこの値段はブログで話題になっているらしい。ラーメン好きの友人は、店内のたくさんの鏡やファンシーな椅子にラーメン代を払っているに違いないと憤慨していた。多少味は落ちても小さくて暗くてアートっぽくて面白いラーメン屋らしいお店がいいそうだ。

いまさらだが、アメリカでもローマ字表記でRamenとしてしまったがために、わざわざRでラーメンと発音しなければならなくなり、違うラーメンのことを話しているような気になる。 日本語のラーメンならLamenだ。

ロックフェラー家の株主提案

昨日、水曜日の株主総会で、結局、ロックフェラー家の提案は通らず、もっとも可能性が高いと思われていた、CEO兼チェアマンのレックス・ティラーソンの職務を二つに分ける案も敗退した。具体的な温暖化対策案は引き出せずとも、これだけの世の中の関心を惹きつけたことの効果は大きいだろう(宣伝効果○ミリオンドル?)。

エクソンの前ヘッドを含め、地球温暖化説に懐疑的な人も世の中には存在する。映画、『The day after tomorrow』のように氷河期が訪れるという説もある。この氷河期説は深海流の流れが変わり、劇的な気候の変化が起こるというものだが、これは何世紀か後に起こるか、というタームの話であるのに対し、地球温暖化は我々がその顛末を目撃することになる。不確実なことに対する我々の反応は鈍いが、「いつ」、「どんなこと」が起こるかがはっきりしていないだけで、100%の確率で起こるとしたら、それはサインを見逃しているだけだ。

いずれにしても、どう考えても、自分の住処は汚さないほうが身のためだ。

ヒラリーのポスト

早く大統領予備選から降りるよう、圧力がかかるヒラリーは、「ロバート・ケネディも6月まで戦っていた」、と6月に暗殺されたJFKの弟、ボビーに触れ、テッド・ケネディが悪性脳腫瘍と診断されたばかりだったこともあり、広く顰蹙を買った。

ヒラリーが優勢だった頃は、ヒラリーオバマコンビもありうるか、という声もあったが、今は副大統領候補にヒラリーの名前が挙がっている。二大候補で対立する党内をまとめるためにも、それがもっとも平和であり、再度ホワイトハウスを狙うビル・クリントンも乗り気で、次に大統領を狙うなら、副大統領になっておくのが一番、ということらしい。巨大な選挙マシーンを稼動させ続けるにはお金がかかる。中国の大地震がアメリカで起こっていたら、ヒラリーも早く降参することになったのではないだろうか。

ジェフリー・アーチャーの小説、『ケインとアベル』の続編、『ロスノフスキ家の娘』では、ポーランド移民からホテル王になったアベルの娘、フロレンティナ・ロスノフスキは一度は勘当されるものの、自分で事業を興し、女性初の副大統領になり、そして大統領になる。女性が初の大統領になるには、副大統領になってから、というのがセオリーだった。それでも主人公は最初から大統領を狙っていたが、直前に相手陣営にしかけられ、副大統領候補に仕立て上げられてしまう。しかし、最後は大統領が倒れ、ポストが回ってくるのだ。

ポストオイルの時代/ロックフェラー家 vs. エクソン

ロックフェラー家はジョン・ロックフェラーのスタンダード・オイルで財をなした。つまり、石油で大富豪になったわけだが、今はスタンダード・オイルの流れを汲む、エクソン・モービル石油の次を探すように圧力をかけている。

ロックフェラー家フィランソロピー活動でも有名であり、環境問題にも力を入れている。これまでも内々に、エクソンに地球温暖化問題に真剣に取り組み、二酸化炭素の排出を削減するような代替エネルギーの研究に力を入れるように言って来たが、効果がない場合はどうするか。ロックフェラー家の環境保護団体と違うところは、エクソンの大株主でもあるところだ。今週水曜日の株主の決議で、ファミリーの意思を実現させようとしている。もっとも、これが決議されるかどうかは疑問視する声が大きい。

アメリカのお金持ちは社会慈善活動家に転じることが多い。特に女性。(ウッディ・アレンの『世界中がI love you』で、ゴールディ・ホーンが演じる弁護士の奥さんは、慈善活動に走り回っていたが、あんな感じだ。)しかし、株主権を行使してまで、大祖先の興した事業、自分達の富の源に方向転換を迫るとなると、そうとう大きなパラダイム変換のときにあるといえるのではないだろうか。

国境を越えた労働組合の合併

ダイムラー・クライスラー(すでにダイムラーに戻っているが)のように、市場がボーダーレス化した今は、国境を越えたM&Aも普通になっているが、組合も大西洋をまたいで合併することになりそうだという。アメリカの労働組合、ユナイテッド・スティールワーカーズはイギリスの最大の労働組合、ユニオンと合併し、アメリカ、カナダ、イギリス、アイルランドに300万人の組合メンバーを抱えることになる。

ユナイテッド・スティールワーカーズ自体が、名前のとおりの鉄鋼組合ではなく、すでに、鉄鋼のほか、アルミニウム、紙、タイヤ、ゴム等の組合合併してできたもので、先進国から減っていく労働者の交渉パワーを維持するために、合併を繰り返してきた歴史が伺われる。それならまず巨大な自動車労働組合合併するのがよさそうなものだが、それは本拠地をどこに置くかなど、条件が折り合わなかったらしい。

同じ組合でも、賃金水準が同じレベルの先進国の組合同士でなければ、交渉力が増すどころではない。でも、生産拠点、組合が強い産業が逆上陸してアメリカ、イギリスに戻ることがあるかといえば、それは考えにくい。それでも、ロンドンは再び世界の金融の中心となりつつあり、イギリスに拠点を持つ意味は組合にとっても大きそうだ。そしてこの合併組合のターゲットはといえば、まだ未定だが、インドタタ・グループのタタ・スティールだというのだから、もうタタジャガーを買った(飼ったのではないですよ)以上に歴史的転換期を感じる。ガンジーに見せたいものだ。

原油が枯渇するドバイに原油取引がシフトする?

ブーン・ピケンズやゴールドマンのアナリストの予想が正しければ、当面、我々は原油高のニュースを聞き続けることになるだろう。その最高のタイミングで、ドバイ金商品取引所DGCX)でWTI取引が火曜日にローンチとなる。

ドバイも産油地であるが、それはあと10年で枯渇するとも言われており、原油に依存しない経済を作るため、首長のシェイク・モハメッドのもと、金融市場、不動産、観光業をベースにドラスティックな転換を図り、すでにGDPの原油への依存度は数パーセントとなっている。来年、世界一の高さの建物、ブルジュ・ドバイが完成すれば、多くの人が自分達が知らないうちに(もうすでにそういったものを作れるぐらいに世界からお金も人も集まってきているのだが)見たこともない未来都市ができていたことに愕然とするだろう。

コモディティ高の原因を身近なところで悪役を探そうとすると、ヘッジファンド、コモディティファンドの投機的取引となる。中国、インドの台頭、第四次産業革命というような理由では、議会の公聴会に呼び規制する相手がいないのだ。(もう規制ではなく、新しい時代をどう生きるか、皆で模索する時期に来ていると思うのだが、どうも皆、Standard Operation Procedures、SOPsから抜け出せない。)5月20日にアメリカの上院では、この件について公聴会が開かれ、投機的な取引を取り締まる機運が高まっている。するとファンドはどうするか。そのまま、NYMEXでの取引からドバイに移ってしまうかもしれない。ドバイはすでに中東の金融センターの地位を固めつつある。おまけにドバイがベースであれば、法人税、所得税、消費税もただというアドバンテージがある。Sovereign Wealth Fund (SWF)が存在感を見せるだけではなく、市場自体がアメリカのお家芸を脅かすものになるかもしれない。

原油高で変わる行動

原油は昨日1バレル、135ドルをつけた後、今日は下落しているが、小糸製作所に敵対的買収を仕掛け、日本でも有名になったブーン・ピケンズ氏(この人はもともとオイルマンだ)が1バレル、150ドルを予想し、さらなる高値が皆の視野に入ってきている。

昨今の原油を含めたコモディティ高から始まるグローバルな問題にどう対処すべきかの記事は、「それでも我々は今でもSUVに乗っている。便利だからやめられないのだ。」という他人事の調子が多い。これがアメリカ人のスタンダードだろう。原油高のニュースと同時に、自動車メーカーは大金を使って広告を打っているし(原油高のおかげで中型車が売れているらしいが)、車自体が大きな買い物だから、燃料高ですぐに車を買い変える方向にはマインドが動かないのだろう。ニューヨークではスマートカーを見かけることもほとんどない。人の日常の行動パターンを変えるのは恐ろしく大変だということだ。これはブッシュを再選させてしまうような慣性の法則ともいえるものなのか。

「あなたが明日もSUVに乗れば、それが原因で来年にはあなたの街で洪水が起こり、あなたは家を失います」ということを100%信じさせることができれば、その人は車に乗らなくなるだろう。いつ起こるか分からないけれども確実に起こることが想定される事象と自分の行動とのゆるいけれども確実につながっている因果関係のチェーンを、理解させる方法。何かを売って利益を挙げるためには、お金というインセンティブで人は物凄い能力を発揮するのだが、危機に瀕してはそれを上回る能力を発揮するはずだ。その危機のサインを皆が見逃すことがないといいのだが。

JFK/モンダヴィ/クラスター

お酒を飲めない自分でも、こんなところに住んでワイナリーを経営できたら、と思うほど、ナパ・バレーは緑が美しく、空気も食べ物も美味しく、気候もよく、自然の中で楽しく生活できそうなところだ。もともとワインの産地で有名だったナパを更に世界にまで広めたのは、先週94歳で亡くなったロバート・モンダヴィだ。

家族でワイナリーを経営していたモンダヴィはその功績が認められ、人気絶頂のケネディからホワイトハウスのディナーに招待される。JFKに招待されたのだからとモンダヴィは妻に毛皮のコートを買うが、兄夫婦が招待されることも毛皮のコートも弟夫婦にとって見れば、ひっかかるところであり、それがきっかけとなり家族内紛争が勃発し、モンダヴィは家業から追い出されるが、そこから更にモンダヴィが飛躍するところが、禍福は糾える縄のごとしである。彼のガッツ、情熱のなせる業だろう。

すでにホワイトハウスに招かれるぐらいだったナパのワインを、フランス・ワインに対抗できるまでに名実ともに上げるために、モンダヴィは50代で再スタートを切る。盲目的にフランス物を珍重する世界に、ナパ、カリフォルニア・ワインを認めさせたのだ。ナパには当時ですでにマイケル・ポーターの提唱する、クラスターが出来上がっていたのではないかと思うが、そのクラスターのレベルを更に引き上げ、今では、ハーバード・ビジネス・スクールのケーススタディーにも登場する。足るを知ることも大切だが、常に上を、一番を目指す姿勢、そしてパッションは世界を前に進ませる原動力だろう。

株主が物を言える市場

彼の期待通りの結末になるかどうかは別にして(パートナーシップやビジネスの一部を売却というシナリオもあるかもしれないが)、アイカーン氏の委任状争奪戦がきっかけともなり、ヤフーマイクロソフトは交渉を再開した。

ヤフー役員は自分達の目標に向かってベストを尽くしているはずだが、株主の権利として、別のもっといいオプションがあれば、それを選択させるべく、圧力をかける力は担保されている(それが嫌なら、未公開会社でいるしかない)。しょっちゅうproxy fightがあるようでは、経営も安定せずにエネルギーの無駄遣いで本末転倒だが、日本でも、乗っ取られるかも、と経営陣が泡をふいて防御に走るような状況にならずにクールに対応できるよう、免疫ができるぐらいにこういう案件が増えればいいのにと思う。昔(資本が希少なものであり、国策会社、産業に優先的に分配し、規制金利下だった頃)であれば、そんなことで争う余裕はなかったし、当時は猪突猛進で問題なかっただろうが、そのような時代は終わり、長期に渡る各国中央銀行の緩い金融政策のお陰で、バイサイドが力を持つ時代になったのだ。そのぐらい富の蓄積が進んだとも言えるだろう。そういうルールはあるけれど、暗黙の了解でここでは使えないことになっているんだよ、では困る。

暗黙のルールが跋扈する市場は、もとからいる人にとっては居心地がいいところだろうが、新参者にとっては遠慮したいところであり、新しいエネルギーを呼び込めない市場は縮小均衡し、衰退していくのが世の流れだ。

新しい時代、新しいリーダー

週末に、エドワード・ケネディ上院議員が発作で倒れ緊急入院した。テッド・ケネディはケネディ家の当主、一度は兄達と同じく大統領職を目指した民主党の超大物、リベラルの重鎮である。(兄のJFKが長生きしていたら、今のようなアイコンにはならなかっただろうと思う。)

彼がオバマ支持を一月末に表明したのは、もちろんオバマには追い風となった。(ヒラリーには超逆風)そのとき、テッド・ケネディはオバマの中に、本物の何かを見たに違いないと思った。でも、裏を返すと、テッド・ケネディは本当に(or本当は)クリントンズ(クリントン夫妻)が嫌いだったのね、ともいえる。クリントンズはオバマ支持表明時期を遅らせ、できる限り中立でいてくれるよう御願いしていたともいう。

新しい時代には新しいリーダーが登場するものなのだ。クリントンしかり。でも一親等は知名度、お金で下駄を履きすぎているし、帝国を作られても困るし、もう新しくないので遠慮してもらいたい。世の中は勝手な数字で区切ることができるわけでもないだろうが、21世紀の幕開けにはちょっと遅い気もするが、まだ21世紀の始まりといえなくもない。

高い石油の時代

もう原油が三桁の100ドル超の値段でも、違和感を感じることはなくなったが、ゴールドマンのコモディティアナリストは新たに2008年下半期の原油価格の平均を141ドルと予想した。現在のWTIは128ドルに迫るか、というところだから、さらにレンジ一つ突き抜けた数字である。

これはマーケット主導の動きというよりも、ファンダメンタルズによるもので、今は歴史的な価格水準の変化のときなのだという。これは原油に限ったことではないだろう。

もうcheap oilの時代は終わったというのが既定路線になっているが、高値続伸となると、代替手段(エネルギー)を考える、イノベーションが進む、使用を控える、景気後退などのバリエーションが考えられる。危機に瀕し画期的な展開がこれから期待できるのだろうか。コモディティ高に限らず、住宅バブルの崩壊もあり、アメリカの消費者の信頼感指数は28年ぶりの低さとなっている。センチメントとしては順当な反応だろう。超身近なところでは、近所のベーグル屋のベーグルも、この数年で覚えている限り、一個95セントから、現在の1ドル30セントまで値上がりしている。

Proxy War/委任状争奪戦争

アイカーン氏はヤフーのボードに何人か送り込むのではなく、ヤフーを乗っ取り、役員を全部変えるつもりらしい。ヤフー創業者のジェリー・ヤン氏も含めてだ。(もっとも彼が一番の標的という見方もある。)

ヤフーマイクロソフトの一株33ドルのオファーに納得せずに、カウンターオファーで37ドル、と言ったところで、マイクロソフトは諦めて交渉のテーブルから去ったが、諦めきれない株主は何をするか。アイカーン氏にproxy flight(委任状争奪戦)を起こして欲しいと頼んだのだという。どんな大株主でも、一人ではできることには限度があるが、Collective actionという手段が担保されており、そのようなことのできる経験豊富な人は、アイカーン氏なのだ。

通常は政治にはかかわらないゴシップ誌まで参加し、超盛り上がりを見せている大統領選だが、民主党の予備選はエドワーズオバマ支持を表明したところで、あとの関心事はヒラリーのその後を案じるのが中心となっている(副大統領は誰になるのだろう?)。が、アイカーン氏の登場で、しばらく紙面はさらに賑やかになるだろう。

ゲームの法則/Proxy Fight(委任状争奪戦)

マイクロソフトのヤフー買収交渉が決裂した後も、ヤフーの株価は買収話が持ち上がる前よりも、遥かに高い株価に留まり、まだまだ物語は終わらないというマーケットの観測を示していた。

そこに超大物投資家アイカーン氏が委任状争奪戦に乗り出すかもしれない、というニュースが流れ、また注目が集まっている。現在の株価よりも、マイクロソフトのオファーした買収条件のほうが高いので、株主にとっては交渉決裂は不満なのだ。また決裂した両社を交渉のテーブルにつかせ、話をまとめたいという意向だ。ビリオネアだから、個人でもう10億ドル以上のヤフー株を買ったといっても、総資産からしたら微々たるものだろうが、アメリカの投資家はスケールが違う。日本で同じことをやったらゲームの法則としては許されても、暗黙のルールに背き、社会全体を敵に回し、退場させられてしまうのではないだろうか。それも怖い社会だ。

数年後にはこの業界の勢力図はどのようになっているのか、楽しみだ。

終わらないGMストライキ

GMが200ミリオンドルをストライキ中の自動車部品会社にオファーしたところで、決着するかに見えたストライキ(自動車部品工場とGMの工場双方のストライキ)は、結局は、組合側も自動車部品会社側も、GMに「もっと、より多く」を求めており、現在進行中だ。200ミリオンドルは、ストの終焉が条件になっており、GMはもっとお金を積むか、もっと何かをする必要がでてきた。GMが何かしない限り、生産が止まっているので人気車種も売るものがなくなってしまう。

自動車部品会社は、アメリカの工場は閉めるなり、賃金をカットして、メキシコに工場を移したいのだ。この2ヶ月以上のストライキのGMに与える影響は800ミリオンドル。そして、GMは別の破綻した部品会社の始末も抱え、住宅用不動産モーゲージ関連の損失も抱え、GMのプレジデントはついに誰もが使いたがらない言葉、「リセッション」を使い、アメリカの自動車産業は明らかにリセッションに入っている」と言明した。工場一つにしても(それでもカナダの工場を閉めることが決まったばかりだが)、何もかもが大きくて潰せないのも本当だろうが、イノベーションのジレンマ、大きな物は変わり難い、のは致し方ないことなのだろうか。

ソフトパワーの罪

ソフト・パワーとはハーバード大学のジョセフ・ナイが提唱した、軍事力、経済力(ハード・パワー)によらない、文化、価値観が海外に伝わり発揮される力である。アメリカはなんだかんだいっても、このソフト・パワーが強いから大丈夫だという。

世界中どこでも(いや、どこでもとは言えないが)、マクドナルドの看板が目に付くのも、アメリカのソフト・パワーの力だろう。これには資本力も貢献しているだろうから、完全なソフト・パワーの産物とは言えないだろうが。

2003年の世界中で読まれた超ベストセラー、『カイト・ランナー(邦題、君のためなら千回でも)』はアフガン出身のお医者さん、カーレド・ホッセイニによって書かれた。涙なくしては読めないが、それ以前に、我々はこの本で、ソ連のアフガン侵攻以降、長らく閉ざされた世界だったアフガニスタンの世界を垣間見て、顔を持ったアフガニスタン人のドラマを読むことができる。作者は、UN難民高等弁務官事務所の親善大使となり、ダライ・ラマらと並び、今年のタイム誌のもっとも影響力のある100人に選ばれており、タイム誌の彼の紹介は、アフガンの女性の権利に関心の深いローラ・ブッシュ(現ファーストレディ)が書いている。

2007年末にはこの本の映画版が公開された。当初、アフガンの少年達を起用して問題ないか、懸念もあったようだが、アフガニスタン側も問題なかろうとの判断で、本物のアフガニスタンの少年達が原作のイメージそのままに滅多にいないほど近しい親友を演じている。アフガンの少年達を起用して問題ないか、という懸念は、物語がマジョリティのパシュトゥーン人と抑圧されてきたハザラの民族問題を含んでいることと、少年のレイプシーンがあったからだ。映画はアフガンの少年達の学期が終わるのを待って公開された。映画自体はアフガンで公開されなくても、海賊版DVDが流れ込む。そして、パシュトゥーン、ハザラの民族問題は再燃し、映画会社は少年達の身の危険を回避するため、UAE、アラブ首長国連邦の学校に転校させた。いつ戻ってこられるのかも分からない。レイプは映画の中の話であり、シーンは暗示的に描かれただけだが、アフガンの人には区別がつかないのだ。そもそもこのことを問題にする多くの人は映画を見てもいない。風説の流布で、彼らは自分の国にいられなくなってしまったのだ。映画、ガンジーで、ベン・キングズレーがあまりにもガンジーそっくりだったため、撮影現場では、インド人はガンジーが生まれ変わったと思い参拝したという。ガンジーが生まれ変わったと信じるなら、まだ問題はないが、自分の同胞が召使として扱われ、レイプされたと信じてしまうとしたらどうだろう。映画、オーメンでジャッカルから生まれたダミアンを演じても、アメリカでは問題ないが、問題になる国もあるのだ。

間違いなく、カイトランナーは(原作も映画も)、アフガニスタンの外の世界にアフガニスタンのことを知らしめるきっかけとなった。この本の前にアフガニスタン人の気質についてアイデアがある人はどのぐらいいただろうか。ソフト・パワーの面目躍如である。でも、それが折角落ちつきかけていたアフガンの国内を揺さぶり、アフガン少年達が、他国まで逃げなければならなくなってしまったとしたらどうだろう。映像の力の凄まじさと、ソフト・パワーを傲慢にもアメリカの基準で判断した結果ではないだろうか。(映画自体は超お薦めです。なんといっても原作の力が凄いのですが)

GMストライキの顛末

今週、人気車種を作っているGMの工場がストに入った話を書いたが、その工場は名目では自分達の条件改善のために、ストに入ったものの、GMに部品を供給している同じくユニオン(組合)の会社のストライキを助けるため、とも言われていた。昨日、ついにその部品会社にGMが200ミリオンドル払うことが発表された。部品工場のストを終わらせるためである。

部品会社は28ドルの時給を一気に半分の14ドルに下げようとして、従業員のストライキ反撃にあった。時給が半分になって困らない人はいないだろうが、会社の言い分は、「下げないと同業者との競争力がない、この条件を飲まないのなら、仕事は全部ここからなくなるかもしれないぞ(つまりストの効力がなくなる世界)」だったが、GMが200ミリオンドルの補助金を出してあげることで決着しそうだ。

∴ストはまだまだ効力があるわけだが、GMは同じように補助金を要求してくるところ、助けが必要なところを山のようにかかえ、自社内でもオートローンの返済の遅延などなど問題山積みだ。すると、ストで一瞬、個人、個々の企業のポジションをキープしても、GM自体が長期的に地盤沈下しかねない。それでもマリブを供給できるほうが短期的には重要だろうが。

格付機関の代わり

昨日、水曜日、ムーディーズはマネジメントの一人の辞任を発表した。SP(スタンダード、の部分は分かるにしても、何故、金融関係で(金融関係でなくても)プアーズという名前になるのか、いつも不思議に思っているがいつもそのままになっている)でも、マネジメントの発表があったのは、そう前のことではない。サブプライム・モーゲージのABSのデフォルトが問題になり始めた頃から、格付機関は批判に晒されてきたのだから、こういった人事の発表はまったく不思議なことではない。

でも、問題が社会的に露見する前、規制当局を含め、プロ達が、格付機関の格付に疑問を持っていなかったかといえば、それは嘘だ。格付機関がこのストラクチャード物はAAA といったから、デフォルトしないというものでもないし、利益相反するポジションに格付機関がいること自体、判断が疑わしいものになる。彼らは知っていたが、格付機関をマーケットで順番、格付を振る役割から引きずりおろしたら、誰かがその代わりをしなければならない。規制当局が自分達ができるかといれば、それはノーだ。大手の金融機関のプライシングを皆で使えるか、といれば、それも無理だ。すると、こうなるのを待つしかなかったのだ。

ことの顛末として、格付機関は議会、SEC等の捜査の対象となっている。では、ポスト格付機関の時代はどんなものになるのだろう。

自動車組合ストライキの将来

GMがこれで本格的に中型車市場でトヨタのカムリ、ホンダのアコードと闘える、とマーケットに送り出した自信作、マリブを作っている工場がストライキに入った。ガソリン価格もどんどん高騰する中、今が売り時なのに、売れ筋商品がなくなってしまうのは痛い。

部品がなくては車を組み立てようもないが、GMのストには、同じく組合メンバーの自動車部品会社のストライキを助ける(GMに自動車部品会社を説得させる?)意味合いもあるようだ。このストライキ、いつまで効果があるものだろうか。左翼がかった友人は、unionizedされたところ優先で買い物するという。彼女によればUPSはinだが、Fedexはoutだ。こういう人はマイノリティなので、それだけでは組合の力は続かない。

シンガポールでは過去に最低賃金を一気に引き上げ、付加価値の高い仕事しか、国内には残らないようにし、一気に水準を引き上げた。アメリカでは、自動車工場を含め組合が強かったために、賃金水準が上昇し、大衆の購買力が上がり、国(あるいは世界)の経済を牽引する購買層となり、経済大国となったという説もある。

昔は代替の労働力がなかったから、組合、ストライキがワークしたが、今は工場ごとそっくり海外に持っていくことも可能となっている。逆に企業としては、他社と競争するためにはそうせざるを得ない。すると、先進国の残された労働者は、どうなるだろう。賢いシンガポール人は、プレッシャーをかけられることで、一気にレベルアップしたが、そのほかの国でもこれは当てはまるだろうか。彼らの仕事がなくなってしまい、社会保障のお世話になるようになったり、低賃金労働者になってしまうと、今度は世界の経済の牽引力の有力な購買層がなくなってしまう。多国籍企業は儲かっても、本国の人民は地盤沈下しかねない。部分と全体のバランスはどんな仕組みでとることになるのだろう。

砂糖ロビー

自由市場主義を掲げるアメリカも、実際はダブルスタンダードであり、農業はコーンベースのエタノールに限らず、保護が厚い。日本と同じで、農家はコレクティブ・アクションに強いので、大きな票田であり、ロビー活動にも強いのだ。

最近は以前にもまして、肥満が問題視されているようだが、山盛りフレンチフライ、コーラ、ピザを嬉しそうに食べている人を見れば、問題が生じるのも無理はないと思わざるをえない。おまけにお菓子はとても甘い。日本のような甘さ控えめなケーキを流行らせれば、肥満削減にも役立ち、表彰されるのではないかと思ったが、友人に、「アメリカは砂糖ロビーが強いから、そんなことで成功したら暗殺されるかもしれない」と脅された。暗殺される前に、甘味は習慣性が強いので、甘さ控えめでも甘さが分かるようになるところまで辿り着くのに一苦労だろう。

食糧価格高騰が問題になっているさなか、アメリカの下院では、砂糖農家へのさらに手厚い保護法案が議論されている。砂糖ロビーが強い結果、砂糖農家への保護は農業セクターの中でもぴか一である。国産砂糖のquota、砂糖はエタノール用には輸入できるが、そのまま砂糖として国産ものとは競争させない、など内容は盛りだくさんだ。おまけにある農家支援の上限は年収約1億円以下、とものすごい金額になっている。ようはアメリカの農家はお金持ちなのだ。当然、補助金をつけることにより、砂糖価格は上昇する。アメリカの嫌いな市場価格の歪みが起こる。食糧価格が高騰しているのに、さらにそこで、裕福な農家に補助金をつけて、価格高騰に拍車をかけるのは、全体論では本末転倒なのだが、票田をかかえた政治家にとっては、それが仕事なのだ。全体を考えて、部分として行動する原則は、お金と身近なものに対して感じる効用曲線の違いでワークしないのだとしたら、何かを変える必要がある。

Better than expected

今日発表の雇用統計はアメリカにおける雇用がさらに2万人減少していることを示していた。しかしながら、その数字は予想されていたよりもよかったために、株式市場は上昇した。金利物は下落したに違いない。

こういったことでマーケットが調整するのは当然だ。さもなければかなり鈍いマーケットだろう。ただ、こういった短期の取引で稼げる人がいるとして、彼らはマーケットの潤滑剤、エージェントになっているとしても、仮に彼らがそのスマートな頭脳を雇用創出するようなクリエイティブなことを考えるために使うとしたら、どちらのほうが全体にとって効用が高いだろうか。

まずは本人が決めるのだから、リターンとその確率、各々の仕事について感じる本人の効用曲線によるだろう。金余り現象が、お金に対する効用曲線を強力な重力のように変質させ、リターンとその確率自体も変容させているとしたら、社会への人材アロケーションは歪んでいるのではないだろうか。

高価な食糧の時代

冷害などで、野菜の価格が高騰すると、「こんな小さなレタスが500円」、「お鍋の野菜だけで○○○○円」などと報道されるが、それが例外的なことだからニュースになる。例外的なことではなく、恒常的なことになる時代がすぐそこまで来ているのかもしれない。

中国、インドなどの台頭は、彼らの食生活の変化だけでなく、これまで農村にいた人達が都市に移動し、食糧供給に携わる者から消費者に転換することを示している。世界的に見ると、人口はさらに増加、耕作できる土地は限られている。石油のように、食糧価格が上がることにより、ブレークイーブンポイントが上がり、農耕地に変えることにかかるコストを凌駕する利益が見込めれば、砂漠の周辺も農地化されるかもしれないが、それには限度がある。(日本人の嫌いな遺伝子組み換えを含め)品種改良により収量は驚くほど上がっているのだが、それは土地の持つエネルギーを前倒しで吐き出させているようで、どこかでしっぺ返しがあるかもしれない。そもそもそれでは追いつかない勢いで、食糧の価格は高騰している。

FOMCでFFレートの0.25%を云々する以上に、世界中へのインパクトの大きな話であり、ボーダーラインにいる人達にとっては文字通りの死活問題である。これまでの発展パターンは、脱農業、脱工業で、日本のような先進国はサービス産業化していった。それでも、アメリカ、フランスは今でも農業大国である。土地の収益という観点から、食糧価格が上がることにより、農業へのより戻しが起こるのだろうか。(いまやイリノイの大とうもろこし農家は大金持ちだ。)しかし、サービス産業と異なり、農業はレバレッジが効かない。脱工業化してしまった人達はレバレッジをかけて、コモディティ市場に参入するほうが多そうだ。マーケットには行き過ぎた状況により戻しをかけるバランス能力があることを期待したい。